テンポキープ・タイムキープについて

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テンポ・キープのコツとは何か・・・長年考え、色々と試行錯誤した結果、テンポ・キープに一番有効なのは、演奏する曲のメロディー(他の楽器のリフやホーンラインなども有効)を頭の中で流して歌い、プラスその曲のテンポで自分自身が心地良いと感じる踊り方(体の動かし方)で体を躍らせるやり方で、楽にテンポ・キープ出来ると分かった。

テンポ〇〇〇から力づくでズレないように、あたかもクリック(メトロノーム)に合わせて演奏してるかのように正確にプレイしようと意識するのではなく、その楽曲のメロディーや他の楽器がやっている事を頭で流し、歌いながらきちんとイメージすることによって、すごく自然にテンポをキープ出来る。

もちろん正確なタイム感は必要不可欠で、ある程度クリックとの練習も必要だと思う。ただ、クリックを聞きながらそれに合わせて5分間叩き続ける事と、クリックを聞かないで5分間同じテンポをキープするのとでは、まったく別世界の話になる。

どちらかと言うと、クリックに合わせて演奏する方が楽だ。なぜならクリックは機械なので人間と違って感情が存在しない。一度そのテンポにこちらの体が慣れれば、あとは合わせようとすれば何とかついて行けたりする。(最終的にはクリックに合わせようとするのではなく、気付いたらクリックと同化していたくらいの感覚になるように意識する)

クリックなしの場合はどうだろうか。なかなかそうはいかない・・・なぜなら今まで信頼してガイドにしていたクリック音が無くなり、主なガイドとなるのは自分の体内時計や周りのバンドメンバーのプレイのみとなる。1曲何分間もの間、同じテンポをキープするためのガイドとして頼れる、クリックの代役となる体内時計を育て上げなければならない

ロサンゼルスの師匠たち②グレッグ・ビソネット氏のブログでも体内時計については少しお話しているが、今回は主にクリックなしでビートを叩く際、どのような思考でテンポをキープするか、そして体内時計に自信をつける方法にフォーカスして、今までで一番有効だった練習方法もご紹介したい。

例えば、クリックを聞かずにプレイする際、テンポ100から絶対にズレずに5分間8ビートを叩くことなど非常に難しく、そしてこれが出来ても実際のアンサンブルの現場では役立たない。実質、テンポ100はこうだ、と言葉では説明出来ない。あくまでテンポ100だとこれくらいだ、という感覚的な表現になる。では、この感覚的な表現を、どうすればある程度明確的に出来るのか。   

日本では、絶対音感ならぬ絶対リズム感を鍛える事を目標にする人を多く見るが、これをゴールに設定しても、人間同士で演奏する音楽のアンサンブルの現場では一切役に立たない。なぜなら、人間がプレイする以上、人それぞれのタイム感覚の波動・うねりがあって当然であり、そのそれぞれの波動が噛み合わさる事でバンドの演奏が成り立つから。

自分ひとりが、クリック通りの正確なだけの、ある意味無個性なビートを叩いているからと言って、必ずしもバンドとして心地よい音楽に聞こえるかと言うと、そうとは限らない。

例えば同じ1曲の中でも、すごく大人しく落ち着いた感じのAメロで、ドラマーだけが思い切り前のめりなタイム感ですごくアグレッシブだとおかしい。または逆に、すごく激しい攻撃的なサビで、ドラマーだけが物凄く落ち着いて緩い気分で、後ろにもたり気味のタイム感でもおかしい。

要するにドラマーが、1曲の同じテンポ内で、Aメロ・Bメロ・サビなどそれぞれのセクションでのバンド全体のタイムの波動に、自分の波動を乗っけて合わせていくこと/または周りがドラマーに合わせてくることが非常に重要になる。

そうするには、楽曲のメロディー、他の楽器のリフやホーンラインを常に頭の中で歌いながらプレイ出来れば、ただ単にテンポをキープするという概念から、曲の流れをキープするという概念に変わり、その曲のイメージから必然的にテンポも感じる事ができ、非常に~自然なタイム感で~1曲を進行出来るようになってくる。

テンポ(BPM-Beats Per Minute-テンポの単位で1分間の拍数のことはただ単に数字によって表された速さから理解出来るだけではなく、メロディーラインやホーンライン等の他楽器のリフやフレーズによる脳内のイメージからも把握することが可能であることは間違いない。そして何よりも、頭の中で楽曲を流す事でテンポを把握することにより、テンポ〇〇〇ならこれくらいだ、という自分の体内時計に数倍の自信がついてくる。

クリックなしで演奏する時に一番大事なことは、1曲を通して1テンポも崩さずに力づくで同じテンポをキープするのではなく、ある程度のテンポをキープした上で、その楽曲のそれぞれのセクション(Aメロやサビなど)ごとのフィールに準ずる演奏をすることだ。

ちなみにこのある程度~の度合いは、クリックで2テンポの枠内となる。クリックを聞かずにバンドなどで演奏する時、この枠内でのテンポの変化であれば、タイムがちょっと前に引っ張る感じや、ちょっと後ろ気味でゆったりした感じのような、フィールの変化があるようにしかリスナーには聞こえない。3テンポ以上速くなったり遅くなったりすると、ズレているように聞こえてしまう時があるので注意したい。

最終的に、周りのバンドメンバーがそのフィールの変化の波動にきちんとついて来てくれたり、逆にこちらがついて行くことで、バンドとしてまとまった演奏をすることが出来る。

実際に楽曲のイメージによるテンポ・キープを練習をする時に、各テンポごとの楽曲を探すのに非常に役立つサイトがあるのでご紹介したい。元々はジョギングをする際に走る速度を一定に保つための様々なテンポ(BPM)の曲を掲載したサイトである。ページ左部分のSearchタグのすぐ下の欄に検索したいテンポを入力し、右横のBPMボタンを押せばそのテンポの楽曲がずらりと右側に表示され、試聴も出来る↓
jog.fm/workout-songs←ここをクリック

 

練習方法:

まず、それぞれの練習したいテンポごとに同じテンポの曲を見つける。例えばテンポ100で検索するとそのテンポの曲がたくさん出てくると思うが、出来る限り自分の知っている曲を見つける。もしもそのテンポ内では知らない曲しかない場合は、いくつか聴いてみて好みの曲を探したりする。

次に、その曲のメロディーや他の楽器パートのフレーズやリフなどを頭の中で流せるように覚える。もちろん声に出して歌うと更に曲のイメージが沸いて、自然にテンポも感じやすくなる。
そして、その曲に合わせて踊ったり体を動かすとしたら、自分ならどういう動きをすると気持ち良いかを探る。あくまで自分なりの心地良いやり方を探る。

実際に叩いて練習する時は、まずクリックなしでその曲のメロディーを頭の中で流し、歌って、そして曲のイメージをしながらやってみる。そして次に、その曲の実際のテンポをクリックで流しながら同じことを叩いてみれば、自分が叩いたテンポが正しかったかどうかすぐに分かる。数小節から~約1分間ごとに、クリックなしとクリックありの交互で叩いてみる。
そして、ロサンゼルスの師匠たち②グレッグ・ビソネット氏のブログでもお話したセルフ・アナライズの内容と同じだが、最終的にはクリックなしで叩いてるところを録音して聞き直し、実際の楽曲のテンポと合っているか確認すれば更にいい練習になる。

*1人で8ビートなどのグルーヴの練習をする時には、テンポ100ならこの曲、テンポ120ならこの曲という風に、それぞれのテンポごとに1、2曲づつでいいので、楽曲セレクションを用意しておく。

この練習方法によって、いざテンポ〇〇〇で叩いて欲しいなどと注文された時に、一旦クリックを聞いて確認してから演奏する時よりも、体内時計と実際の正しいテンポとの合致率が高くなった

数分間同じテンポをキープ出来る確率としては、このやり方が今までで一番高い。神経質にクリックと練習するだけではなく、その曲を歌って踊って、感情的・感覚的な部分からテンポを体内で把握するほうがより効率的だ。

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