トラディッショナル・グリップ(レギュラーグリップ)について

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トラディッショナル・グリップ(レギュラーグリップ) PHOTO by Miz Fukuda

~このブログでは、あくまで自分自身にはトラディッショナル・グリップが合っているということで、グリップの解説をしているもので、マッチ・グリップを否定する内容ではない。あくまで自分の体、自分の演奏スタイルやジャンルに合うグリップを自由に開発していくことがゴールとなる~

恐らく演奏中の90%はこの持ち方だ。すごく一般的な見解からすると、ジャズで多く使われてるグリップのため、ジャズ専門のプレイヤーだと思われがちだ。ただ実際のところは一切そんなことはない。

このグリップは、打面に対してスティックに角度をつけやすく、様々な音色を体の角度を変えずに楽に出せる。ジャンルを言い出したらきりがないので大きく分けて、主にジャズでは、スネアの音色は多数表現したほうが世界が広がる。

このグリップで構えた時には既に自然に、打面に対して少し角度がつく。もちろん必要であれば、打面と水平に構えることも可能だ。スティックのチップを、打面に様々な角度で楽に接地させることが可能なのだ。

あくまで、マッチ・グリップよりは少し楽に、そして広いバリエーションの音色を出せるので、トラディッショナル・グリップはジャズという音楽形態に合うグリップというだけである。

僕の場合は、ジャズ・ドラマーを見てトラディッショナル・グリップになった訳ではなく、実はジョー氏に弟子入りするかなり前から既にトラディッショナル・グリップで演奏していた。

それは単純に、ドラムを始めたきっかけとなった、ザ・ベンチャーズのオリジナルドラマー、メル・テイラー氏がトラディッショナル・グリップだったからだ。若い時に目にしたので、スティックはこうやって持つんだという単純な解釈だった。逆にドラムを始めてしばらくしてから、両手が同じ持ち方のマッチ・グリップの存在を知った。

逆にトラディッショナル・グリップの弱点は、Dead Stroke~デッド奏法~(叩いた後、打面にスティックを押し付ける奏法)で、長時間の演奏をする時には、たまに親指の付け根のところが痛くなるというところだ。

そのため、2時間以上のショーで、全曲このデッド奏法で演奏するのは厳しい時がある。ただあくまで、Dead Stroke~デッド奏法~は、音色の違いを表現するための1つの奏法なので、2時間中の全ての楽曲でこの奏法だけを使うことはほぼないので何とかなる。当然、リバウンド(跳ね返り)を受け止める通常の奏法と、Dead Stroke~デッド奏法~の両方を使い分ける場合がほとんどだ。

traditional grip

一般的には、トラディッショナル・グリップだとパワーが出せないと思われがちだが、一切そんなことはない。

トラディッショナル・グリップは、パワーを出せないグリップではなく、マッチ・グリップとは違う音色を出すグリップというだけである。あくまで音色の話である。

そして、トラディッショナル・グリップでパワーを出すという話題になると、“モーラー奏法(腕全体がムチのような動きをして楽してパワーを出す奏法)”というテクニックが関係してくる。しかし、実際的にモーラー奏法は使っても使わなくてもある程度のパワーを出すことは可能だ。

まずモーラー奏法は、自分に合うか合わないかを見極めることが大切だと感じる。全ての人間の演奏スタイルやジャンルにおいて、この奏法が合うわけではないので、場面によって役立つ時だけ使うようにするのが一番効率が良い。当然、モーラー奏法など一切使わないドラマーもたくさん存在する。それで問題ない。

何よりも、現代ではモーラー奏法に関する情報量があまりにも莫大なため、どれが正しいモーラー奏法かなど決めつけることは出来ない状況だ。あくまで、モーラー奏法の基準の要素は⇒体を痛めず、楽して、早く叩けたり、大きな音を出すことが出来る~という内容だ。

モーラー奏法では、上記の基準の要素を実行出来ているかどうかが重要となる。例え、モーラー奏法の基本と異なる手の動き方をしていても、基準の要素を満たしていれば、それをモーラー奏法と定義しようがその人の自由だ。

モーラー奏法の基礎的な部分の見解に関しては、このモーラー奏法を生んだドラマー、サンフォード・モーラー(Sanford A. Moeller)氏をリサーチしてみていただきたい。

 

モーラー奏法のパワーの面以外の要素としては、モーラー独特の手の動きによって、タイムを感じるというところだ。これによって、かなりタイムキープが気持ち良くなったりもする。

トラディッショナル・グリップで握っている左手で、8ビートのバック・ビート(2拍・4拍のスネア)を叩く時に、モーラー奏法の要素を含んだ動きを使って、その動きを一定の動き方に定めて繰り返しキープすることで、タイムキープの手助けをすることが出来る。

要するに、手の動かし方・動かすスピードでタイムを感じる実際に出してる音と音の間~(無音の)スペース~での手の動きを統一することで、タイムキープの手助けを出来るということだ。

これは、~Time by Motion Concept~、手の動きによってタイムを感じる・タイムを奏でるという考え方で、様々な国で多くのドラマーの間で着目しているコンセプトだ。

 

パワーの原理:

体の自然の原理を学んでいると、一般的にパワーを出すために必要な要素は以下の内容だと気付いた。言葉にすると難しく感じることもあるが、実際にやってみると意外と当たり前のことばかりなのでご紹介したい。

~パワーを出すために必要な4大要素~

①脱力~Release~

・最初にスティックを持ち、構える。そして、さあ叩くぞという時にどうするだろうか。物凄く小さな音量じゃない限り、スティックをある程度の高さまで振り上げてから、落として打面をヒットすると思う。この振り上げる時に、全ての力を抜く動作がRelease Motion~リリース・モーション~である。

肘から外側に少し開き始め、ほぼ同時に手首・指先まで脱力した状態で前腕を上げ、手首が下向きにダラ~ンとなるような感じになる。この時点では脇が少し開いてる状態で問題ない。

レギュラー・グリップの場合だとこの時、親指の爪が真上~右横を向き、手首が少し下に垂れ下がるような形になる。これがRelease Motion~リリース・モーション~で、モーラー奏法での1番最初の動作となる大事な動きでもある。この1番最初の段階で、全ての力を抜くことが重要となる。

②高さ~Height~(振り上げ幅)

・打面に対して、スティックを低いところから落とすのと、高いところから落とすのとでは、音量が違ってくる。それなりのパワーが必要な時は、当然その分スティックを高い位置から落とすことが必要不可欠になる。

ハイハットでビートを刻んでる時は、左利きやオープン・ハンド奏法(ハイハットを左手、スネアを右手で叩く奏法)のプレイヤーでない限り、左手の上を右手が交差するフォームになる。そのため、スネアを叩く時に左手を振り上げられる高さに限界が出てくる(左スティックと右スティックが衝突するため)。

ハイハットでビートを刻む際、どうしても左手の振り上げ幅を高く得たい時は、右手の脇を開き、ハイハットを少し自分と反対方向にずらして、遠ざけてセットしてみる。すると、右手と左手がカチッと衝突することを防げる。右半身だけ、一歩前に出てるような感じだ。

この奏法がしっくりこない場合は、もちろん通常のフォームでも問題ない。しかし通常のフォームだと、パワーが必要な時に、この~振り上げる高さ~という要素はフル活用出来ないので、その代わりとして、3番の~スピード~や、4番の~手の重量~などでカバーすればいい訳だ。

③スピード~Speed~(手首の回転の速さ、落下速度を含む)

・これもモーラー奏法と関わる話である。手首がねじれる・ひねるような感じで回転する。この回転の速度が速ければ速いほど、そして勢いがあればあるほどパワーに結び付く。回転が速ければ速いほど、自然に落下速度も増して、パワーに繋がる。

上記2番のスティックを振り上げる高さを得られない時に、この回転と落下の速さや勢いによってパワーを得る事が出来る。

④手の重量~Weight~

・これは1番でご説明した、脱力~Release~の動作の延長線上の話でもある。リリースの動作をするということは、必然的に手首や前腕も上に持ち上がる。そこから(3番で解説した手首の回転を経て)、腕ごと落下させてスティックが打面をヒットする。

スティックをそこまで高く上げられない時でも、リリースの動作を少し大きめにして、前腕や腕全体をある程度持ち上げられれば、スティックに腕の体重を乗せることが出来る。このように腕の重みもパワーの要素となる。

まとめると・・・

これらの要素の中で1番はほぼ必須で、自然に行っているが、1番にプラスして2番・3番・4番をその時よりけりで使い分ければすごく便利である。

例えばハイハットでビートを刻みながら、スネアでゴースト・ノートをたくさん入れるようなグルーヴで、スティックの振り上げ幅~高さ~の要素を得られない時は、~スピード~の要素を使う・・・など。

お気付きの通り、ほとんどのシチュエーションでは、スティックの振り上げ幅~高さ~を得られない時、~スピード~か~手の重量~どちらかの要素があればパワーは出せる。
とにかく、{ (1番) + 2番~4番のどれか1つ}という方式を実行すれば、必ずパワーを出すことは可能である。

 

*下記にトラディッショナル・ジャズドラマー以外で、トラディッショナル・グリップを多用するドラマーの方々の名前を挙げてみた。8ビートなどで2拍・4拍のスネアのバックビートをたくさん叩くような、ビートものの音楽もやるようなドラマーの方々の、左手の感じを是非チェックしてみてください↓

Will Calhoun
Keith Carlock

Vinnie Colaiuta
Stewart Copeland

Virgil Donati
Steve Ferrone

Steve Gadd
Rodney Holmes
Steve Holmes
Ralph Humphrey
Tommy Igoe

Daru Jones
Steve Jordan
Mark Kelso
Rick Latham
Jojo Mayer
Russ Miller
Nate Smith
Steve Smith
Todd Sucherman
Mel Taylor
Johnny Vidacovich
Charlie Watts
Dave Weckl
Steve White

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