尊敬するノーキー・エドワーズ氏との足跡

Pocket

with Nokie Edwards
with Nokie Edwards

ドラムを始めたきっかけ・原点となる音楽は、あのテケテケサウンドでお馴染みのザ・ベンチャーズだ。一言で言い表せないくらい、このベンチャーズというバンドは年代とメンバーによって様々なカラーを魅せてくれる。そしてメンバーとしてのドラマーも複数名いる。

初代ドラマー、ジョージ・バビット氏から始まり、ホーウィー・ジョンソン氏、ジョー・バリル氏と素晴らしいドラマーがいたが、大きく分けて3代目オリジナルドラマーの故・メル・テイラー氏と、メル・テイラー氏の息子である現在のドラマー、リオン・テイラー氏のプレイは似ているポイントもありつつ、グルーヴの種類から異なっていて非常におもしろい。

幸運なことに若い頃から、この2人のプレイを含めてベンチャーズ音楽の詳細を学ぶ機会に恵まれたため、様々なベンチャーズのサウンドスタイルからの影響を大いに受けることが出来た。そして日本滞在中に、ザ・ベンチャーズのオリジナルギタリスト、ノーキー・エドワーズのバックドラマーを務めることになる。

海外ではどんな現場でも、ちょっとしたモノマネをしても見向きをされない。最近出来るようになったような誰かのフレーズをちょこっと入れ込んでも喜んでくれない。それよりも、その時に思い浮かんだ、こんなところでこんなことをしてしまおう・・・と言うような自身の思考で叩いたほうが100倍評価される(もちろんタイムに全然ハマらなかったり、曲に合わなすぎると拍手は起きない)。

基本的に~Who You Are~、まさにあなた自身の~Vocabulary(音楽での言葉遣い)~を求められている。

僕自身も自然とこのアプローチで演奏する体になるための意識と練習をしてきたため、ノーキー氏とのリハーサルまでは、あえてメル・テイラーやリオン・テイラーのプレイを聞き直し、再度研究し直すことはしなかった。

もちろんベンチャーズは大好きで憧れのアーティストのうちの1つだ。昔から聞いてる音楽なので、だいたいの曲は頭に入っている。ただ、自分自身はベンチャーズマニアではなかった。

〇〇マニアや〇〇オタクであることは、そのエリアでの専門的知識能力は勝る。しかし、現場での正しい対応には一切結び付かない。

今のこのタイミングで自分自身がやるべきことは、常に海外生活をしてきた中で、色々な音楽が体に染み付いた現在の自分ならどういうアプローチになるか・・・ということだと自然に理解した。

現時点での自分のバックグラウンドによって、同じ音楽ジャンルでも、数年前や数ヵ月前とはアプローチが異なってくる。そこから生まれる自分自身の何だかのInspriration~インスピレーション~と、サポートさせてもらうアーティスト本人の現在のスタイル/フィールと噛み合わせる作業が常に最重要事項だと感じる。

後にご本人との会話からでも分かった事だが、このタイプの現場では、メル氏やリオン氏のクローン人間を求められているわけではない。

ご本人から特別なリクエストがない限り、現在のノーキー・エドワーズ氏のスタイルやフィールに合わせることが、楽曲をグルーヴさせることへの最重要事項となる。

ご本人との雑談中には、こんな事を述べていた。

「この年齢になると、当然昔ほどのエナジーを出せない時もある。60年代のようなバリバリの速さとエナジーで攻める演奏を聴きたいファンもいるかもしれないが、現在の違う感じのわたしのプレイも楽しんでほしいんだ。指の調子は絶好調だしね(笑)。そんな今だから、ちょうど君のLaid Back(ゆったりした)グルーヴ感がすごく僕に合っているように感じるよ」

この言葉のおかげで、自分自身の演奏スタイルのConfidence~自信~の向上から、更に確信へと繋がったわけだが、ちょうどノーキー氏とやらせてもらうまでは、主にロサンゼルスで黒人のプレイヤーとTop40のショーバンド、ミュージカルの仕事や、Funk系統の音楽のプロジェクトに参加することが多かった時期。やはり明らかにタイム感は後ろ気味になっていた。そんな時のノーキー氏とのショーだったので、ある意味良いタイミングだったのかもしれない。

 

~余談で、このブログの内容に関連するような素敵な会話をしたことを思い出したのでご紹介したい~

ロサンゼルスにいるときは良く出向く、ハリウッドにある有名老舗ライブ・バー、The Baked Potato(ザ・ベイクド・ポテト)。裏口では毎日のように色々なミュージシャンと話をした。

中でも、当時必ず演奏を見に行っていた、ポール・マッカートニーのバック・ドラマー、Abe Laboriel Jr.(エイブ・ラボリエル・ジュニア)氏との会話で、良く本人が語ってくれた内容だ。

「僕は最初、ポールと会って話をした時、ポールは僕のパーソナリティ、そして僕のドラミングを気に入ってると言ってくれたんだ。ポールは、リンゴ・スターのそっくりさんやリンゴ・スターと同じように叩ける代行ドラマーを探してるわけじゃなかった。現在のポールの楽曲を気持ち良く叩ける人を探してたんだ。だからリハーサルまでの期間は、あえてリンゴ・スターのプレイを集中して聞き直し、勉強し直したりはしなかった。ビートルズの他3人のメンバーの演奏に集中して、僕ならこう叩くっていう想像をしたんだ。もし、ウェディングやパーティ、レストランなどで演奏する、ビートルズのコピーバンドやモノマネバンドの仕事だったら、徹底してリンゴ・スターを研究して真似るだろうけど、今回はまったく状況が違うからね。なんと言ってもポール本人とやるんだから。~現在~の本人に合わせないと意味がないと思って取り組んでいるよ」

with Abe Laboriel Jr.
with Abe Laboriel Jr.
Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です