ロサンゼルスの師匠たち②グレッグ・ビソネット氏

with Gregg Bissonette
with Gregg Bissonette

ロサンゼルスのファースト・コール(一番にお呼びがかかる)ドラマーと言っても過言ではない、とにかく音楽的なドラミングをする、スタジオ・ドラマーだ。

音楽的なドラマー(Musical Drummer)とはどういうことだろうか・・・ミュージカルのバック専門のドラマーではない。

叩くフレーズなどがメロディーを意識させてくれたり、楽曲に合うフレーズ、グルーヴやフィールを最優先的に考え、演奏するドラマーだ。海外では自分の近くには、音楽的なアプローチをするドラマーしかいなかったが、日本ではこのような解釈が未だに乏しく感じる。ただ、あくまで音楽なので、ドラム的都合よりも音楽的都合でアプローチするのは、基本中の基本である。ドラムセットは基本的にスネア⇒タム⇒フロアタム⇒キックという順序で音が低くなっていくので、一応音階が存在する。打楽器でも音程はすごく大事なことなので、意識するべきである。

私自身がちょうどグレッグ氏の家に駆けこんだ当時は、手数などのテクニックばかり習得していて、内面的な部分、特にタイムに関する意識が疎かだった。

グレッグ氏のレッスンは他の師匠達とはちょっと違い、教則本などを一切使わないレッスンだ。その代わりに最初に言われたことは、「必ずレッスンを毎回録音して、後で聞き直して練習してほしい」という内容だった。

私は他のレッスンでは、場合によりけりで録音はしていたが、グレッグ氏のレッスンではとにかく録音したものを聞き直し、必要であれば自分で譜面を書いて記録したりするというやり方だ。グレッグ氏のレッスンを受ける場合は、なるべく音質の良いレコーダーなどを必ず持参しなければいけない。

このように録音して聞き直すことをやり始めてからは、~セルフ・アナライジング~(自己分析・解析)が出来るようになった。特に自分自身のタイム感とグルーヴ感がまったく気持ちよくないことに気が付き、主に自分のタイム感について解析をやり始めた。正直に言うと、グレッグ氏に習うまでは、セルフ・アナライジングを一切していなかった。

1時間のレッスンをずっとノーカットで録音しているので、もちろんレッスン内容の復習としても録音を聞き直すわけだが、その中でも自分のタイム感について着目をしたのには理由がある。
初日のレッスンで、「自分の好きなテンポで8ビートを叩いてみて」と言われ、当時よく演奏する機会があったJames Brownの「Sex Machine」のグルーヴを、テンポ・110くらいを意識して約1分ほど叩いた。すると・・・

「テンポが途中からだんだん遅くなる癖があるようだ」という言葉をもらった。この一言からタイムに関する人生をかけた研究の旅路が始まったわけだ。

どうしても、自分の中では、気持ち良く感じていて、ずっと同じテンポで叩けていると思っても、実際には外部にそうは聞こえていない時がある。

ドラマーの人生をかけた課題~Life Time Work~は、手足を可能な限り早く動かせるようにすることではなく、体内時計~Internal-Clock~を完璧にしていくことだ。

この体内時計を最短で効率的に良くしていくためには、~録音~が必要不可欠だ。体内時計というのは、自分自身のタイム感のくせを理解することによって、精密さ・正確さが増す。そして自身のタイム感を理解するために重要なのが、録音したものを聞き直し、細かく解析・分析をする、セルフ・アナライジングの作業をすることだ。

一体何をアナライズ(分析・解析)するかと言うと、主に自分のタイム感のくせだ。良い癖も、悪い癖も全て

今回お話しているセルフ・アナライジングは、主に8ビートなどのグルーヴを叩いてる時のタイム感を良くするためのお話だが、他にも何か見つかるかもしれない。例えばフィルインがハシる・・・など。そういったこともあればメモに記録しておき、自分なりの修正方法を探ると楽しい。

このようにグレッグ氏が力説する、多種多様ジャンルにおいての音楽的ドラマーになるための重要事項を解説した、素晴らしいDVDをご紹介するので是非ご覧になってみてください。
(↓こちらの写真から、または当サイトのドラマーズ・ショップからも詳細確認可能)

次のページで、セルフ・アナライジング作業方法の詳細、そしてもう1つのグレッグ氏のお勧めDVDをご紹介します。

(さらに…)

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ロサンゼルスの師匠たち③マイケル・パッカー氏

約3年間、徹底的に身体的テクニックに関してのレッスンで学んだ。一言で言うとかなり厳格なドラマーだ。

正式な名前はMichael Packer(マイケル・パッカー)氏だが、弟子たちはみんな揃ってMike(マイク)氏と、英語圏でよくある短縮形で呼んでいるので、ここではMike氏と呼ばさせてもらいます。

特にMike氏は足のモーラー奏法で話題になり、足専門の教則本やDVD、そして大手DW社から自身のシグネーチャーのヒールレス・ペダルも発売しているドラマーだ。街のドラム・ドクターという表現が合うと同時に、まさに足のプロフェッショナリストだ。

そのドラマーが抱えてる問題に対して、即効性のある処方せんを出してくれる。その練習法を実践すれば、自身も今まで治らなかった癖が1週間で治ったという経緯がある。すごく細かいことばかりだが、非常に理にかなっている。

例えば僕の場合は、パラディドルで右手アクセントを叩いた後の、ディドル(ダブル/RR)を叩く時に、手首が下向きになったまま(垂れ下がったまま)プレイしていて手首に負担がかかっていたり、当時Dave Weckl氏のテクニックにかなり影響され、ダブルストロークをやるときに手首を内側から外側にひねる方法でやっていたが、Mike氏からは「彼のテクニックはユニークすぎるからまだ真似はするな」と一喝されたことを覚えている。

Mike氏からすると、「まず基本的な体の自然な動きと構造を理解する。そしてその先は、その自然な動きの際に使われている筋肉の使い方を実行しながら、自分なりの楽な動き・奏法を見つけても良い」と述べている。確かにDave Weckl氏も、少なくともFreddie Gruber氏に習うまでは、あんなユニークな動きはしていないわけだ。

まずは自然な体の動きを用いた、体に負担がかからない動きを染み込ませる。その後に自分なりの動き方を発掘していけば、非常に効率的である。この順序が逆になってしまうと、将来的に体に負担がかかるような癖が取れなかったりして、面倒なことになる。

「ドラムを始めたばかりの頃は、色々なドラマーや好きなドラマーからアイデアを盗み、視覚的に叩き方を真似してみたりというやり方になる。ただ、あくまでそれは参考程度にしてほしい。なぜならその憧れのドラマーとあなたは同じ体の感覚を持っているとは限らないから。まずは体の自然な動きに逆らわないようにしてほしい」と、Mike氏は述べている。

あとは何よりも足のアプローチだ。

僕自身はペダルを踏んだ後に、ビーター(ペダルに付いてる、打面をヒットするためのフェルト)を打面に付ける奏法しかやってこなかった。

Mike氏から徹底的に教わったのは、ビーターが打面をヒットした後に、リバウンドを利用してビーターを打面から離す方法だった。手の奏法でのフル・ストロークや、リバウンドを利用して跳ね返ってくることとまったく同じ理論だ。

とにかく最初は、ビーターを打面から離すのがここまで難しい感覚だと驚いたことを鮮明に覚えている。足に関してはとにかく、ビーターを打面につけるか/離すか、この2つの奏法を楽曲のタイプによって自由に使い分けられることがゴールとなる。

このように、Mike氏の理論はものすごく理にかなったものだ。

レッスンで教えていただく内容は、冷静に考えると当たり前のような体の自然な動きに関する事、いざスティックを握ると意外に忘れてしまっているような、身体的なことばかりだ。Mike氏の体の自然な動きをきちんと活用して無駄な動きなどを排除した、スマートで非常に効率的なアプローチからは未だに多く学ぶ事がある。

今回ご紹介したMike氏のテクニックが存分に詰まったDVDは、特に足のアプローチに関する観点がガラリと変わり、今まで以上に足が気持ち良く動くようになる事に間違いないので、是非ともご覧になってみて下さい。
(↓こちらの写真から、または当サイトのドラマーズ・ショップからも詳細確認可能)

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