コピーするということ

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with Master, Steve Gadd
with Master, Steve Gadd

例えばSteve Gadd(スティーブ・ガッド)氏が叩く、ハイハットとスネア間でのインバーテッド・パラディドル(パラディドルの応用形)が絡んだフレーズ~RLRR LRRL~は本人がやり出して広まったのは間違いないが、本人はこのフレーズを叩き出した時に一体どこからインスピレーションを受けたのか・・・

一番重要なのは、手の動きなどの身体的部分の事よりも、どういう思考でどういう影響を受けて、そのフレーズを叩いているかだ。

元々この手順は、Mardi Gras(マルディグラ)と呼ばれる、New Orleans(ニュー・オーリンズ)のインディアンの人々がパレードで、タンバリンなどで叩くリズム・パターンである。(歴史はかなり割愛して、)そして、ニュー・オーリンズのドラマー、Idris Muhammad(イドリス・モハメド)氏によってドラムセットでのグルーヴとして洗練され、世に知られた。

イドリス氏と言えば、昔のブルーノートレコードから発売されている、ギタリストのGrant Green氏のアルバムでファンキーなグルーヴを叩いている名ドラマーだが、その中の曲たちの中でもこの~RLRR LRRL~は叩かれているので是非とも聴いてみていただきたい。(Idris Muhammadは改名後の名前で、旧名はLeo Morrisである。Grant Green氏のアルバムには旧名でクレジットされている作品もある)

ドラムセットで~RLRR LRRL~を使ったグルーヴをすごくカジュアルにして、様々な素晴らしいドラマーへ影響を与えたのが、1970年にロック・バンド、Redbone(レッドボーン)が発売したレコードで、Prehistoric Rhythmという曲で、オリジナルドラマーのPete DePoe氏が叩いたものである。そして、このビートは~The King Kong Beat~キング・コング・ビート~と呼ばれている。

王道ファンク・バンドのTower Of Power(タワー・オブ・パワー)のオリジナルドラマーである、David Garibaldi(デビッド・ガリバルディ)氏も耳にしたのちにこのフレーズに影響され、数々のタワー・オブ・パワーのレコードの曲中でも叩き出した。

そしてもう1つは、Herbie Hancock(ハービー・ハンコック)氏の“Thrust”、そして“Flood(日本語タイトル:洪水)”という2枚のアルバムで、名ドラマーのMike Clark(マイク・クラーク)氏もこの~RLRR LRRL~フレーズを叩いている。

このマイク氏と先ほどのデビッド氏が主に、このフレーズを早いテンポにして、上記のファンク系などの楽曲に入れ出して、新たな応用・発展型として世に聴かせた。特にこのハービー・ハンコック氏の2枚のアルバムでのマイク氏のドラミングは、リニア・ドラミングと言う新たなドラム奏法としても知られた。こちらも是非とも聴いてみていただきたい。

だいたいこの辺りの時代に上記3人のドラマーからの影響を受けて叩き出し、色々と試していた結果、主にハーフ・タイムのグルーヴ上で、32分音符を基盤に叩くのが一番しっくりきたと、本人も述べている。そして、今現在のSteve氏のプレイを見れば、そこから更に最近の自身のアイデア要素も加わって変化を続けていることも分かる。まさにオリジナリティーの要素で満ち溢れている。

このように以前のヒストリーを辿ってみるとまた新たな世界が見えてくる。ただSteve Gadd氏がやり続けてるフレーズだからと言って、Steve Gadd風フレーズなどと述べても非常に中身が薄くなる。

自分自身のレコーディングでもプレイバックの時に気付かさせられることがあったが、詳細を深く知らずに・学ばずにコピーしたフレーズを叩くと、悪い意味で意外と浮いてしまう

これに関しては、下記で説明している消化の作業をやっていれば絶対に問題は発生しない。

とにかくヒストリーを辿る事を絶対に忘れたくない。なぜなら、ヒストリーを辿っていくほうが学べる内容量も情報量も倍増し、何よりもそのコピーしたものを自分自身のカラーに変換してから放出する時に、モノマネ感が出てしまうことを防げる。

ネット上の完成形の映像や情報だけで100%学ぶことは不可能であり、満足することも出来ない。可能な限り現場に行き、そしてその本人と会話をして学んでいる。

コピーをする時の必須プロセス

①理論的に理解する

色々なミュージシャンやドラマー(もちろん音楽家以外の分野からも)からインスピレーションを受け、やりたいフレーズやグルーヴを理論的に頭で理解する。

ここまでは一般的な「コピー」の作業のひとつで、パターンを譜面に書いてみたり、手順やアクセントはどう叩かれているのか、更にはそれに関するヒストリーもしっかりと辿り、全体的な詳細を確認することになる。

例えば口頭で書いた、Steve Gadd氏のパラディドルのフレーズ。手順はすでに書いた通りだが、どこにアクセントがつくのか、このフレーズをどのタイミングで入れるか、ドラムセットのどこを叩くのか・・・などなど。これらの詳細を頭で理解する。

②実際に叩いてみる

実際に楽曲の中で、遊び半分にここだと思ったところにそのフレーズを入れてみたりする。この時点では①での内容は完了していて、理論的にそのフレーズの事を詳細まで理解済みということが前提となる。

意外とすぐに叩けるようになれば、次の③のステップに進む。長いこと練習してもなかなか出来ない時は、イライラで爆発しそうになる寸前まで頑張ってみてから練習を止めて次の③へ進む。

③一番大事な最終プロセス~消化

頭で理解し・体で覚えたこと(例え出来てなくても、ある程度だけでも)を十分に消化する。消化するということは、コピーして学んだ内容を詳細までしっかりと体に浸透させることである。

実際に叩いて練習した内容は、体が筋肉の動きなどを含めて理解しようとする。練習したことによってインプットされた内容を体自体が理解するまでに少し時間がかかる。

そのためこの消化作業は、練習後、まる1日ほど、練習をしないで過ごすことで完了しやすくなる。

自分のものにしたいフレーズなどを一日中練習した次の日は、昨日練習したことを歌ったり、想像したりしながら、スティックを持った(身体的)練習を一切しないで過ごす。意外と体の筋肉などは、この休んでる間に、練習した内容を吸収して理解してくれる。

ここで大事な事は、練習を休んでる時にイメージトレーニングをすること。

そして次の日、または2日後などにスティックを握ってみると、練習した内容が脳内と体内で自動的に吸収・整理・理解され、頭がすっきりし、どうすればきちんと叩けるかという感覚的な指示が脳から手足へと伝わる。それによって、一昨日出来なかったことが気持ち良く叩けるようになっていたりする。これがまさに消化を完了した状態だ。

*もし万が一、②から③への流れを何度やっても出来るようにならない場合は、この③の消化にかける期間を2日間に増やしてみる。先ほど述べた通り、あくまで休ませるのは体だけで、イメージトレーニングは続ける。

④創造

きちんと消化出来ていれば、これ以降は頭の中を空っぽにして、細かい事は考えず、感覚だけに頼り、まさに自分の個性を発揮する場面へと突き進んでいく。

消化後は細かい事を考えなくても手足はある程度動いてくれるので、コピーした内容を自分なりの言葉・表現に変換する作業に集中できる。この最後のステップは一番楽しくやるべき段階である。

コピーした/コピーしようとしてる内容からインスピレーションを受けて、真似てみた段階で満足して完了してしまうと、オリジナリティーがまったくなくなってしまう。

例えば海外ではどんなドラマーからレッスンを受けても、ロサンゼルスの師匠たち①ジョー・ポーカロ氏のブログ(←ここをクリック)でも紹介したような教則本からそのままフレーズをコピーして出来るようになっても、最終的には必ず「自分なりのアプローチで叩いてみて」と要求されてしまう。

こんな時にも、他からコピーしたフレーズでもきちんと消化出来ていれば、モノマネ感を出さずに自分の歌心基準で自然に演奏することが出来る。

最後に・・・

コピーするフレーズに関しての理解度が高ければ高いほど消化していればいるほど、手足は意外と動いてくれる。

まずは、自分が叩きたいフレーズの完璧な理想完成形を頭で流す作業を常に行う。更にそれを口に出して歌うことが出来れば、消化率はすごく高くなる。そしてなおかつ、消化率が高ければその分、コピーした内容を自分なりの言葉・表現に変換する作業1本に集中できるようになり、オリジナリティーという世界が開ける。

一番最初にご説明した、~RLRR LRRL~のパラディドルの変形型は、世界中のドラマーが持っていて世界標準となっている教本、「Stick Control」の最初のページ、No.33のパターンそのものとして物凄く有名なので、是非チェックしてみて下さい。本来は、手のコントロール能力を向上させるための教本ですが、自分自身の新たなフレーズの世界の開拓にも必ず繋がる優れものです。
(↓こちらの写真から、または当サイトのドラマーズ・ショップからも詳細確認可能)

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